2014年11月26日

実例で見る活字書体「きざはし金陵M」①

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『ピラニア〜雨の街、俺たちの絆〜』
(瓜田純士著、太田出版、2009年3月19日)

おなじ作者の『ドブネズミのバラード』(瓜田純士著、太田出版、2008年9月12日)とともに、『ピラニア〜雨の街、俺たちの絆〜』も漢字書体「金陵M」と和字書体「きざはしM」が本文に使われている。
「金陵M」と「きざはしM」が、サブカルチャー系のこのような書物に使われることは予想もしていなかった。しかも横組みである。



明代の南京国子監本から復刻した明朝体「金陵」と組み合わせる和字書体は、和字書体は、明治時代に制作された書体の中から、築地活版製造所五号活字の「きざはし」を選んだ。原資料は近代明朝体との組み合わせだが、動的な結構は「金陵」に合うように思われた。したがって「きざはし」(和字書体三十六景)は最初から字面を小さく設計してある。「明朝体、和字オールド・スタイル、オールド・ローマン」の組み合わせを基本としている。
「きざはし」のほかに、おなじ「和字オールド・スタイル」カテゴリーに属する「さおとめ」(和字書体三十六景)と、「和字ドーン・スタイル」とした「あおい」(和字書体三十六景)との組み合わせも考えた。「あおい」はもともと明朝体風の漢字書体と組み合わされていた。「さおとめ」は清朝体風の漢字書体と組み合わされていたが、明朝体とも相性がいいと思われた。
ほかに「はやと」(和字書体三十六景)との組み合わせも、実際によく見かけている。「和字オールド・スタイル」カテゴリーに属する和字書体は、近代明朝体と組み合わせると少し小さめになる。
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2014年11月22日

実例で見る活字書体「かもめ龍爪M」①

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『ジハード1 猛き十字のアッカ』
(定金伸治著、星海社文庫、2014年1月9日)

冒頭のわずか6ページだけだが、漢字書体「龍爪」と和字書体「かもめ」の組み合わせが使われている。
最初は読みなれていないので、読みにくいと思うだろう。近代明朝体に比べれば、とげとげしく感じるかもしれない。しかし、少し読んでみると抵抗感がなくなる。そうなると多くのページで読みたいと感じてくる。意外と読みやすい。
本文は詰めていないのがいい。書体を生かした組みかただ。文字と文字の間があいて見えるが、それでも縦に心地よく流れてくる。それが読む速度とあっているようだ。詰めなければならないと考えている人が多いようだが、私は一読者として、あいているほうが読みやすいと感じる。



宋代の四川地方の刊本から復刻した「龍爪」と組み合わせる和字書体は、江戸時代の木版印刷の字様を復刻したものを想定している。すなわち「宋朝体、和字ドーン・スタイル、ヴェネチアン・ローマン」の組み合わせである。
そもそも江戸時代の木版印刷字様を復刻しようと思ったのは、宋朝体との組み合わせを前提としたものであった。その中でも「さきがけ」(和字書体三十六景)の粗さが、四川刊本字様の「龍爪」と合うように思ったのだ。
「さきがけ」のほかに、「和字ドーン・スタイル」に属する「かもめ」(和字書体三十六景)との組み合わせを考えた。近代明朝体と組み合わされていた「かもめ」だが、その力強さは「龍爪」となじむのではないかと思ったのである。
ほかに、おなじ「さきがけ」と同じ「和字ドーン・スタイル」カテゴリーに属する「もとい」や、「うえまつ」(和字書体十二勝)との組み合わせも可能である。
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